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蠢動する人込みの中で、そこだけがぼんやりと光って見えた。
まるで暗がりの小さな蛍のよう。その少女は薄緑色のツインテールを腰まで垂らして雑居ビルにもたれるように立っている。
頭には白い大きなヘットフォンをして凛とした表情で顔を下げている。襟付きのベストにネクタイを締め、そこから出た細い両肩は恐らく素肌なのだろう、極めて色白で常に人目を引き付ける。
胸の膨らみもほぼ感じない程に華奢な身体つき。そして、黒のフリルの付いたミニスカートから伸びる細い脚には膝上まであるエナメル性のサイハイブーツを履いている。
なんだろう興奮が止まらない。ごくりと喉を鳴らして唾を飲み込んだ。
2次元の住人を見つけた思いだった。その異質な少女を暫く凝視する。
瞬きをしている間に消えてしまいそうで、兎に角、目が乾く……高校生くらいかな。いやでも、今は24時を過ぎている。それってコスプレなの? まさかの援交? 想像が止まらない。
久保あきらは顎を乗せていた右手でプラスチックの容器に入ったアイスコーヒーを取った。咥えたストローの先で氷を掻き混ぜてから一気に吸い込んだ。
冷たい感触が喉を通るのが分かる。
記録しないと……ふとキーボードに目を落として書き出しの文章をほんの少しだけ惟みた瞬間だった。
――少女がいない。
焦って立ち上がり舐めるように全体を見回したが、まるで嘘みたいに消えていた。
少女はバーチャルのように突然現れて、突然消えたのだ。ああ、それだけで鼓動が速くなる。
いったい何だったのだろうか。
掌には汗がいつまでも滲んでいた。
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