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星のランプに手が届く。
昼下がりの新宿。久保あきらは田舎の公営住宅で目にするような階段を上がっていた。
これ程までに息が上がったのはいつ以来だろう、スーツを着た背中が汗で、びしょびしょに濡れている。革靴の音がカンカンと鳴り響いた。
このビルは空き部屋が多いせいなのか、人の気配をあまりに感じない。緊張しながら指定された505号室へと足を進めた。
数週間前の、あの少女との邂逅は創作意欲を湧き立たせるものだった。確かにあれは久々の気持ちと行動との紐帯だったように思う。
そして次回作の材料になるようにと、「占い」とか「魔術」「呪い」「禁術」の類を無作為に検索していく中で、此処がヒットしたのである。
――「未来想定師・空想たける事務所」ここは占いの類の店らしく、また人気かと言えばそうとは思えなかったが、何となく引かれるものがあったのも事実である。そして、メールで何回かやり取りをして、今日の予約に漕ぎつけたのだ。
但し、日時や時間、その恰好から道順、はたまた当日の朝、口にするものまでが事細かく条件として添えられていた。
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