星のランプに手が届く。

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   右側の部屋をノックした。  ――「どうぞ」微かに男性の声がする。指示されたように瞬きを我慢して30数えて入っていく。そのカウントは軽快なリズムと相まって跳ねるように数えていた。   占い師と言えば、よく日本最古のとか、何々の母や父、また奇跡の鑑定士、何とかマスターなど様々な冠が付くようだが、この先生の売りは、「少々の未来想定」といったものである。  久保あきらは「予想」ではなく、「想定」としたところに、ビックデータ的なものや、深い見識、何らかの根拠みたいなものを頭に描いて、奇術的ではなく、あくまでも科学的な施術のようなものを期待していたのだ。  そしてそれは驚くべきものであった。 「……失礼します」  まずは寒さを感じた。しかも真っ暗である。先程いた部屋が余りに明るすぎて目が慣れないせいか、何も見えない。それでも確かに彼の存在はある。    「左手に椅子がありますから、お座り下さい」  隅の方から声がした。段々と縁取られてきたその人物は、部屋の奥の方にいるようだった。  壁に沿って置いてある椅子を手探りで引き寄せて腰掛けた。よく見ると全ての壁が黒く塗られているのが分かる。  空想たけるは何かを書いているようだった。 ――「何を書いているのですか?」 「あなたの人となりです」  空想たけるは言った。  ある程度、年配の方みたいだ。 「それで、何かわかりましたか?」
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