星のランプに手が届く。

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 空想たけるは、自身がトランス状態であるように見せることで、相手を支配していたのだ。  あの真っ暗な部屋や明る過ぎる部屋もそう。事細かな指示、机の心霊手術の写真、彼の格好、ビルまでの道のりさえ、その演出の一部なのだろう。  さらに新宿という場所が、そうした土壌が、彼の占いを受け入れ易くしている要因でもあるように思えた。後で気付いたのだが、あの時は異常なまでに汗を掻いていた。  恐らく彼は途中でクーラーを切ったのだろう。ああ、それさえ身体の異常な変化として捉えて、躓きの小石としたのである。  今日体験したそれら全ては、本来は好んで否定し、看過すべきものであったが、久保あきらは心酔していくのを止められないでいた。  本当に見たいものを見てみたい。そんな有様ばかりが頭の中で明瞭に描かれる。
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