溝口水晶の人となり

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   それにしても一般人である君野二葉に、それほどまでの魅力があったのだろうか。恐らく、そこには女子校特有のものがあったと予想する。  異性との日常的な接触機会が少ないが為に、本来、彼女らが持つはずの女の子らしさや意識高い系に取り替わって、一体、自分とは何なのかとか。また、本当の私とは?……等のアイデンティティについて考える時間が殊の外、多かったのではないのだろうか。  そして、それは偏狭な考えに走ることもある。その閉鎖的であろう環境も和を掛ける――。  会社のある大手町から溝口水晶の住む神楽坂までは東京メトロ東西線で10分程かかる。  この「束の間」の日常で、僕は目を閉じてヘッドフォンで耳を塞いでいる。  外からの情報を遮断して考える時間を作っているのだ。仕事柄、情報の大切さは、この4年間で痛いほど分かった。だからこそ、それを整然とする時間が必要だった。  そして何より「わざわざ作る時間」と違って、この「束の間」での思考は、僕をより効率的で、より独創的な人間へ昇華させてくれる気がする。  いずれは過去の僕と未来の僕とを繋ぐ結び目のような大切な時間になるはずだ。
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