溝口水晶の人となり

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  両親は二人とも市役所の職員で、出会う前から共通の趣味として「鉱物採集」をしていたそうだ。そして、それが縁で話すようになり、やがて恋に落ち結婚して僕が生まれたという。   僕は物心つく頃には山や河原へと石拾いに連れ出されたのをぼんやりとだが記憶している。(いや、石拾いと言うと怒られる。採集って言うべきなのだろう)  また、小学生ともなると長期休暇を利用して東北や信州の有名とされる鉱山へ出向いたこともあった。総じて楽しい思い出だ。  いつか酔った父が黄鉄鉱(パイライト)を磨きながら言ったことがある。 「石には、その土地柄が特徴として残っている。人間も同じだ。いいか水晶、お前はここの水や土や空気、食べた物、交わした言葉、感情、経験、思いなど、全てが合わさってお前を形成している。それを忘れずに東京でも頑張りなさい」  ……何だろう。その時は甲子園に初出場する高校球児みたいな心境だった。
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