星のランプに手が届く。

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   ――「100人のうち1人が右を向くとします。残る99人は気にも留めないでしょう。寧ろ蔑んだ目で、その人を見る筈です。但し、100万人のうち、1万人が右を向くとしたらどうでしょうか。そうなれば恐らく、残りの99万人の多くは実際に右を向くし、またその殆どがそうしたい衝動に駆られて賛同し始めるのではないでしょうか――。同じ1%の行動なのですが、こうも結果に差が出てきます。ようは、大衆迎合は商売になるのです。人は欲望そのものを欲しているのですから……。  例えば、4月3日は如何でしょう? 御社の名前に因んで、「よみの日」と冠を付けて、その日を「旅行の日」にしてみませんか? 御社の300万人近い年間の取扱人数を考えれば、業界を巻き込んで上手くいく筈です。チョコレート業界に出来たのですから、旅行業界で出来ないわけがないと考えますが……」  そうして、かなり踏み込んだ事業計画案を面接官に差し出すのであった。  結局、この提案は採用され、その後、想定通りビックビジネスとなっていったのである。今日では、この日だけで5億円以上を売り上げる特別なイベントとなっている。
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