星のランプに手が届く。

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 こう改めて書き出してみると、かなりその「常識」とはかけ離れているように思う。  内容にしてもそうだし、また、あの少女との邂逅が頭から離れないせいなのか、選んだ日も妥当かどうか疑問符が付くだろう。  そうして、久保あきらはこの今の生活が「文章を書くこと」に於いて、正解か否かの2択では、とうてい判断出来るものではないと考える。  しかしながら、まず敏腕編集者は否であると断言するだろう。  それは当然である。彼女の立場は彼女にとっての答えを導くものだから……それでも「改めます」と、諸手を挙げることは出来そうもない。  何故なら、久保あきらは、それぞれの立ち位置によって答えが何通りも存在することを知っているからだ。但し、どれが人気作家への近道なのかと問われると、正直答えに困ってしまうと思う。  戦場ジャーナリストの故・山本美香の写真集「これから戦場に向かいます」の中に内戦の続くアフガニスタンで、ベッドに腰かけた老婆の写真と共にこんな言葉が添えられていた。 「戦争は、どちら側が正当かわたしにはわからない。でも、ひとつだけわかっていることがあるわ。……わたしたちが犠牲者だってことよ」  さらに一人の少女の写真とこんな言葉もあった。   「こんな荒涼とした世界でも  明日はやってくる。  明日をつないでいけば、  未来につながるのだろうか」
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