溝口水晶の衝撃(2度も誘拐監禁された少女)

5/13

109人が本棚に入れています
本棚に追加
/196ページ
    金曜日の午後8時前。溝口水晶は仕事を途中で切り上げて東京メトロ東西線に乗っていた。  今夜は2週間ぶりに山崎果子(ヤマサキカコ)と会う。最近は嫌なこと続きで、気晴らしにと思い彼女に連絡したのである。  出会って2年になる僕たちは、よく言う恋人未満、友達以上の仲だった。勿論、身体の関係は、もう既に十分にあった。  華やかで背が高く高層ビルを思わる彼女は大手広告代理店の管理職らしく、最近の働き方改革が不満みたいで、会えば必ず僕の知らない部下の根性無し論を語っていた。  僕はロジカルな彼女の愚痴が好きだった。本当は悪意が無いのに、それらしい言葉に変えて話をする才能は葉山デスクには無いものだ。  多分、デスクよりも優しいのだろう。さらに果子さんは僕より8歳年上のバツイチでもあった。若いころ結婚して直ぐに別れたらしい。 「若気の至り」――彼女は、事あるごとに口にした。  ただ果子さんにとって、その言葉は便利だが好きではないようだ。そして、それを説明したいかどうかで、今後の自身のスタンスを決めるという。  4回目にBar「a Little Bit」で会った時、僕にはこう説明してくれた。
/196ページ

最初のコメントを投稿しよう!

109人が本棚に入れています
本棚に追加