星のランプに手が届く。~君野二葉~

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 10秒前とルカが声を発すると、二葉はクラウチングポーズをとる。  女子高生の走り幅跳びの記録保持者は6mを飛ぶと云う。  彼女が飛ぼうとしているビルとビルの間は何メートルあるのだろうか?  まるで飛べる像が結べない。  ルカも無理だろう。それでも二葉なら……心臓が早鐘となって胸を打つと同時に悪い予感も顔を出し始める。  ああ、一体どちらの二葉が見たいのだろうか。  激しく興奮する私が在る。  すると、ルカが右腕を天に突き付け、その掌をぱっと開いた。  可憐な花が咲いたよう。白い花弁が一秒ごとに折れていく……フォー、スリ―、ツー、ワン、そして……GO!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!と絶叫ながら手を振り下ろしたのを合図に、ついに二葉は低い姿勢のままで一歩を踏み出していった。  コンクリートを這うように走る前傾姿勢に何故か実家で見たヤモリを想起した。  二葉は大きなストライドで体を徐々に起こしながら加速していく。  私は指を動かすのを忘れて食い入るように見ている。  青色のジャケットが風を受けて膨らんだ。  彼女の後姿が見えた時、あああ、右足でコンクリートを蹴った。その衝撃の強さが伝わる。  二葉は大きく両手を振り挙げて午前7時の空へと飛び立っていった。
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