溝口水晶の衝撃(2度も誘拐監禁された少女)

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「えっ、僕が、ですか?」戸惑いが多分に混ざる声だった。  不意にブレードランナーの原作で、フィリップ・K・デックの小説が脳裏に浮かんで、デスクに少しだけ概要を説明した。それはアンドロイドを通じて「人間とは?」を問う内容だったと記憶している。  ――確か、小説では人間を定義づけるものに「共感性」を挙げていて、「発達した脳を持つ人間が同じ生物である羊の夢を見るように、アンドロイドもまた同じ仕組みで出来ている電気羊の夢をみるのか?」という哲学的な問い掛けに対する小説の答えは、NOであったように思う。  人間は生きる為、殺生する生物の中に「心」を想像するという。それが「共感性」だとして、アンドロイドにはそれが無いというのが理由だったはずだ。  すると、その講釈に一切、口を挟まなかったデスクが突然話し始めた。 「私ね。人間とAIは、いずれ区別がつかなくなると思うの――。  「心」とは「意識」であり、「意識」とは「脳内の電気信号の反射にすぎない」と、何かの本で読んだことがある。だから、それを人工的に構築出来れば、そこに「意識」が生まれて「心」が宿るはずでしょう。  ……まぁ、その脳の仕組みすら分かってない現状では、私たちは想像するしかないのだけどね。AIに「心」が生まれても当然、不思議ではないと思う」
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