星のランプに手が届く。~君野二葉~

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   次の日。いつものようにTSUTAYAの窓から渋谷を見ていた。  大学生っぽいグループが男女合わせて7,8人ほどで円になって騒いでいる。  薄いひらひらスカート女は、かなり酔っているようで、短髪男の首に両手を回し、ぶら下がるようにして不規則なステップを踏んでいた。  密着された短髪男は女の耳元に口を近づけて何かをしきりにしゃべっている。  リュックを背負ったリーダーらしき男の合図で、彼らはスクラムを組むかのよう集結し始めた。黒頭が前後に蠢いて、それは群がる蟻の群れを見せられている思いだった――。     前方に中腰で構えた髪の長い女が自撮り棒を伸ばすと、彼らは同じようなポーズをして、何の衒いも躊躇もないまま似たような笑顔を貼り付けていく。  思うに、一方通行の同調こそが今の時代、その画像は「フェイク」の頭に#(ハッシュタグ)を付けて上手に拡散されていくのだろう。  解けたようにバラバラになるグループ。それでも短髪男の動向を見ていた。  地面にハの字を書いて座り込む酔った女の耳元で未だに何かを言っている。黒髪が滝のように垂れて私にはその女の表情が見えない。  すると、彼は後ろ向きにキャップを被った体格のいい男を呼び寄せて、アイドルグループの広告を掲げるビルの軒先で何やら相談し始めた。  
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