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02:霧惑海峡の幽霊船
――霧惑海峡。
いつからか、帝国と女王国との間に広がる海は、本来の名ではなく、そんな奇妙な名で呼ばれるようになっていた。
二国間で休戦が締結されるまでは、この海峡を舞台に戦艦や駆逐艦、戦闘飛行艇、そして帝国の人型兵器『戦乙女』と女王国の機動兵器『翅翼艇』が絶えずぶつかり合っていたという。その時には、まだ、この海峡も本来の名で呼ばれていたはずだ。
だから、コルネリアが知る限り、ほんの二、三年からのことだ。この海峡を行く船が、霧に巻かれて消えるようになったのは。
元より、嵐が多く、そうでなくとも霧の流れが複雑で、航行が難しいとされる海域ではある。しかし、嵐による遭難、難破とは別に、本当に突如として通信が途絶え、それきり帰ってこない船の話が突如として聞かれるようになったのだ。
消えた船が戻ってきた例は、皆無と言っていい。唯一、ある客船が航路から外れて消えた後、魄霧の海に投げ出されることのなかった幸運な者たちを乗せた緊急脱出艇が、偶然近くの岸にたどり着いたという例があるくらいだ。
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