1人が本棚に入れています
本棚に追加
このナイフを男に突き刺せば、悪い夢は覚めるだろうか。男も幽霊船も消え去って、温かなベッドで目覚めることができるだろうか。
――それは、ありえない。
コルネリアは内心で断じた。そして、ナイフの切っ先を男の喉元に突きつけて、唇を開く。
「ナイフは借りておくわ。それから……、話を聞かせて。ここのこと、あなたのこと。それから、わたしを、どうしようとしているのか」
男は、刃が首筋に触れていることにも気づいていないのか、いたって朗らかな声音でコルネリアに応える。
「お望みのままに、フロイライン。しかし、お話の前に、お召し物をご用意いたしましょう。そのままでは、風邪を引いてしまいます」
その言葉に、コルネリアは己が毛布一枚だけで飛び出してきてしまったことを思い出し、今更ながら羞恥に頬が熱くなるのを抑えられなかった。
最初のコメントを投稿しよう!