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* * *
コルネリア・ハイドフェルトは、重たい瞼をゆっくりと持ち上げる。
ぼやけた視界に映るのは天井だった。知らない、天井。
天井から吊られたランプは記術仕掛けであるらしく、炎のそれとは違う、薄青とも緑ともつかない柔らかな光を投げかけながら、ゆらゆらと頼りなく揺れている。
――揺れて、いる。
揺れているのは、何もランプだけではないようだ。コルネリアが横たわる寝台が、否、この狭い部屋全体が、鈍く軋む音を立てながら、ゆっくり揺れているということを、体にかかる違和感で察する。
湿った空気を吸って、吐いて。
「ここは……、どこ?」
朦朧とする頭を軽く振って、上体を起こす。かけられていた毛布が肩から落ちて、柔らかな胸があらわになる。白い肌のあちこちに走る傷痕を見下ろしながら、何とか、このような場所にいる理由を思い出そうとする。
船。そうだ、意識を失う前は、確かに船に乗っていたはずだ。しかし、嵐に呑まれて船が転覆し、そして――。
ぎぃ、と。一際大きな音が耳に飛び込んできたことで、のろのろとした思考が遮られる。
「お目覚めですか、フロイライン?」
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