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突然、投げかけられた意味のある言葉に、慌てて胸の前に毛布を持ち上げて、そちらに視線を向ける。
きっちりと閉ざされていた金属製の扉がいつの間にか開いていて、そこには一人の男が立っていた。
ぼさぼさに伸びた髪に、口元をすっかり覆って顎から垂れ下がる、ろくに整えられていない髭。酷く細長い手足も相まって、荒れ野に一本だけ生えた枯れ木を思わせる、みすぼらしい男だ。
そんな男が身に纏っているのは仕立てのよいシャツと上着、それに金属の釦が煌くずっしりとした外套で、よく磨かれているのだろう、靴もぴかぴかに輝いている。
ただ、服のサイズが合っていないのか、上着の丈や裾があまりにも短かったり、すっかり足首が見えてしまっていたりと、ちぐはぐさがコルネリアの不安をあおる。
どれだけ記憶を探ってみても、こんな奇天烈な男を、コルネリアは知らない。
無意識に呼吸を止めて男を見上げていると、男は、いくつもの指輪をつけた節くれだった指で、煤けた丸眼鏡をくいと持ち上げる。前髪と髭に覆われて表情は定かではないが、その口から飛び出したのは、妙に芝居がかった言い回しだった。
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