お嬢様のランチ

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 車を出してもらい、サイゼリヤの前で停めてもらう。 「こちらです」 お嬢様は躊躇している。車が去ったのを確認して、彼女の手を引っぱり中に入る。お嬢様に触れるなんて、運転手に見られたら後で先生にどんな目にあわされるかわからない。下手したら解雇だ。 「いらっしゃいませ」 席についてもお嬢様はずっとキョロキョロしている。 「お嬢様」 「あ、私、お行儀悪いわね」 メニューを渡すと目が輝いた。 「わあ、写真があってわかりやすいわ。どれも美味しそう」 とりあえず好印象らしくほっとする。 「どれにしますか?」 「え~決められない、佐倉のおすすめは?」 「辛味チキンです」 「じゃあそれにする」 「これを押して下さい」 僕が言ったところに白い指が触れると、 ピンポーン 軽やかな音が鳴った。 お嬢様は押し続ける。 ピンポーン ピンポーン ピンポーン 「ダメです、お嬢様」 周りの人が僕たちを見るが、当人は訳も分からず笑っている。
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