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弐
向日葵を購入するという目的を達成した武雄は、寄り道することもなく家路に着いた。家は、三十一坪の昭和感ただよう平屋である。
居間には赤褐色のタンスがある。そのタンス上にはタンクトップと麦わら帽子を身に付け、一輪の向日葵を掲げている笑顔の少年の写真立てと枯れた花を挿した花瓶がある。
武雄は、枯れた花と先ほど購入した向日葵を入れ替えた後、写真立てに手を合わせ目をつむり、額を合わせた手の指先に近づけた。
しばらくして、武雄はちゃぶ台の上に氷の入った麦茶を置いてテレビのリモコンを手に取ると、電源を入れた。
『今日午前八時頃、富嶽川で遊んでいた小学五年生の子どもが流され現在───』
点けてすぐに映ったのは、ニュースである。武雄は慌ててリモコンのボタンを押してバラエティに変えた。彼はカッターシャツの胸の辺りをくしゃりと掴んで真っ青になりながら荒くなった息を整える。
「和哉、ごめんな……」
武雄はちゃぶ台に額を擦りつけ突っ伏す。ちゃぶ台の上で握られつくられた両手の拳が震える。目からあふれ出た涙はちゃぶ台に小さな水たまりをつくった。声を出して泣き出してしまいそうになり、奥歯をぎりりと強く噛み締めどうにかたえようとするが、鼻を啜った拍子にうなり声のようなものが時折り漏れ出ていた。
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