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 ぽたっ、ぽたっと、庇から雨粒が落ちてくる。  それをぼんやりと見ながら、そっか、とおれは思った。  保健室に来たっていう友達はこいつだ。 「…帰ろ」  ドーナツが食べたい。  眠れないのはなぜだろう。考えた事もない。  家にいると落ち着かなくて眠れない。  布団に潜って、包まれるようにするといつの間にか寝ていたりも出来る。  しんとした夜の静けさが嫌だ。  昼間の保健室が好きだ。  あの遠くでざわざわと人が動いて、話している感じ。人の歩く音。誰かが何かをしているのを聞きながら眠るのがいい。  家には誰もいないから、余計にそう思ってしまうのかもしれないけれど。 「えーと、あとね、ダブルチョコクランチと、そっちのいちごのやつ。それで、ふわふわホイップとー、チーズホットドッグ!」 「…なあそれ、おやつのレベルじゃなくね?」 「起きたばっかで腹減ってんの」  お飲み物は? と聞かれてアイスティーを頼んだ。雨の日はクーポンで安くなるなんてお得だ。ふたつあるレジの隣では、クラスメイトがアイスコーヒーとバナナブレッドを受け取っていた。あ、おれもバナナブレッドにすればよかった。  しまった。 「ごゆっくりどうぞー」 「はーい」  ここのドーナツ屋のレジの子はすごく可愛い。いつもにこにこしてて、おれにも優しくしてくれる。好みじゃないのが残念だ。  先に取っていた席に戻る。窓際の席、まだ雨は降っていた。  トレーを置くと呆れた声が笑った。 「すげえな。それさあ、どこに入んだよ」 「え、おれの腹。見る?」 「うわ、ばかっやめろ!」  ぺたんこの腹を見せてやるふりをしたら──ふりだけなのに、クラスメイトは物凄く焦った顔をした。はは、とおれは笑った。 「なんだよ変なの」 「おまえのせいだろ」  耳まで真っ赤になるのが面白い。クラスメイトはぱくりとバナナブレッドにかぶりついた。それを見ながらいいなあ、と言うと、なんでと目で返された。 「おれもそれ、食べたかった」 「──ほら」  差し出されて、思わずあーんする。  かじったところを避けずに食べて、間接キスみたいだと、ふと思った。
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