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月夜の神社
満月の夜になると神社のご神木がクッキリと境内に影を落とす。ざわざわと葉を揺らす黒い姿は本殿を覆うほどの大きさだ。
神主が祝詞を唱える声が本殿から流れてくると、月の光が集まってくるようだった。そして集まった光がご神木をつつんで輝いた。祝詞の声が終わると光も消えて、また静かに月の光に照らされる境内となった。
次の日、ご神木は真新しいしめ縄を張られていた。
「おはようございます、神主さん。」
「ああ、おはよう。」
「しめ縄、新しくしたんですね。」
「うん、もう古くなってきたから結界を張りなおしたのだよ。」
「結界って悪いものが来ないために張るんですよね。そっか、昨日あのへんな奴が来たのも、結界が古くなってたせいですか?」
「ははは。そうかもしれないね。」
「そういえば、あの男あれからどうしたんです?」
「どうしたって、帰ってもらったよ。」
「なんかごねて神主さんを困らせたんじゃないかと思って。」
「いやいや、そんなことはないよ。ここはそういう神社ではないと由来から話してお引き取り願っただけだよ。」
「そうですか。すみません。私、勉強不足で。」
「いいんだよ。巫女さんの仕事じゃないからね、それは。私は馬の世話の出来る巫女さんということで、君に来てもらっているんだ。気にしなくてもいい。」
「でも・・・。」
「さあ、月影と星影が待っているよ。ご神馬達を待たせないように。」
「はい。それじゃ。」
「ああ、一段落したらお茶にするからね。」
そうだ、昨日貰ったニンジンが一杯あったっけ。あれをあげなきゃ。きっと星影も気に入るに違いない。私は道具の入った倉庫に向かって行った。
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