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さらりと告げられて赤面する。
「人間が、お嫌いなのでは…」
「嫌いだ。だが、お前は昨日言ったな。今までの嫁達とは違うのだと」
昨日のやり取りが蘇る。
泣いて、感情をぶつけて、そのまま気を失って…
思い出しながら真っ赤になったあと、急速に青ざめる。
「おれ、すごい迷惑を…!ごめんなさ…」
起き上がって土下座しようとする咲真を前足で倒し、狼神が上にのる。
「謝るな」
キバを剥いてきつく眦を吊り上げて見据えられ、ビクっと体が硬直する。
「人間は信用ならない。だが、お前は違うというのなら――傍におく」
咲真は驚いて目を見開いたまま狼神の顔を見つめた。
「ここにいたいのだろう?」
「はい――…」
自然と迷いない返事が出た。
(傍におくって…いてもいいって…ほんと?)
じわりと嬉しさが広がり、涙がにじむ。
「ありがとうございます…おれ、頑張ります」
嬉しい、嬉しい。一層役に立てるように頑張ろう。
そう思った時、咲真はふと我に返った。
「今、何時なんでしょうか?おれ、朝の支度をしないと…!」
「今日から屋敷のことはしなくていい」
「えっ?」
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