2話 嫁の役割

9/9
761人が本棚に入れています
本棚に追加
/120ページ
 狼神の腕から抜け出そうとするが、力強く抱きしめられていてびくともしない。 「いい、落ち着くまでこのままで」  狼神がまったく離すことをしないので、咲真は観念して狼神の腕の中でひとしきり泣いた。  張りつめていたものが一気に崩れたのか、さんざん泣いて、泣いて、泣き終わった後、咲真は意識を手放していた―――  *** 「狼神様⁉」  屋敷の廊下で咲真を抱きかかえ運ぶ狼神の姿を見た蘭丸が、飛び上がりそうなほど驚いた声をあげる。 「私の部屋で寝かせる。明日からの屋敷の仕事は、通常通りお前たちでやるように。他の者にも伝えておけ」 「は、はい!」  蘭丸は心底嬉しそうな顔で二人の後姿を見送った。
/120ページ

最初のコメントを投稿しよう!