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狼神の腕から抜け出そうとするが、力強く抱きしめられていてびくともしない。
「いい、落ち着くまでこのままで」
狼神がまったく離すことをしないので、咲真は観念して狼神の腕の中でひとしきり泣いた。
張りつめていたものが一気に崩れたのか、さんざん泣いて、泣いて、泣き終わった後、咲真は意識を手放していた―――
***
「狼神様⁉」
屋敷の廊下で咲真を抱きかかえ運ぶ狼神の姿を見た蘭丸が、飛び上がりそうなほど驚いた声をあげる。
「私の部屋で寝かせる。明日からの屋敷の仕事は、通常通りお前たちでやるように。他の者にも伝えておけ」
「は、はい!」
蘭丸は心底嬉しそうな顔で二人の後姿を見送った。
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