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3話 神様の仕事
目が覚めると、いつもと違う感触に包まれていた。
もふもふの毛皮、ではなく本物の…
(なっなっなんで…!)
咲真の体は巨大な銀の毛並みに包まれていた。
すぐ横に大きな狼の寝顔があり、驚いて起き上がろうとすると、寝返りをうった巨体にのし掛かられてしまう。
「わあっ」
ぼふっと音をたててもふもふした毛の中に沈む。
「あのっあのっ…神様、ですか…?」
壁にかかった刀や、美しい日本画が描かれた掛け軸。最初に狼神に挨拶に行った時に見た部屋だった。
狼神の部屋であると思われる場所で、床に敷かれたふかふかの布団に眠る美しい銀の狼。
神様としか考えられない。
けれどこの場に自分がいるありえなさすぎる状況に、咲真の頭はなかなか正常に働かなかった。
どうにか抜け出そうともぞもぞ動く咲真にようやく気づき、巨大な狼が目を覚ます。
大きく口を開けてあくびをして、ぼんやりと咲真に目をやる。
「よく眠れたか?」
狼が言葉を発し、咲真はようやく自分の隣にいる銀色の獣が狼神だと確信できた。
「はい…あの、どうして俺はここに…」
「夫と嫁は一緒に眠るものだ」
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