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娘たちは受け入れられなければ死ぬしかないと。村の為に神にお仕えしたいと最初は懇願する。
だが狼神に媚を売る裏で、使用人たちをひどく扱き使う傲慢な女もいれば。村の好いた男と一緒になるために狼神を殺そうとする娘もいた。
「村娘たちにとって私は、守り神という名で強制的に生贄を取る憎い神なのだろう」
「そんな!そんなことって…」
「あの村の人間は、史郎の縁で受けられるようになった加護を期待しているだけで、ハナから神を敬う心など持ち合わせていなかったのだ。“約束”を違えずにいてやるから出て行けと言えば、皆喜んで出ていった」
咲真には、狼神の目に憎しみの火が灯っているように見えた。
ずっとずっと、友との友情を盾にして村人たちに裏切られ続けてきたのだろう。
「――愚かな人間たちだ。加護を得たいが為に村娘を生贄する。
だが…一番愚かなのは、それでも加護を与え続ける私だな」
狼神は皮肉めいた笑みを浮かべた。
人間への憎しみの中に、悲しみが見えた気がした。
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