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「何を言われてここに来たのか知らないが、お前の村にはそういう歴史がある。フン、まさか男を寄こしてくるとは思わなかったが。いよいよ舐められたものだ」
想像以上の神に対する仕打ち、それを話す狼神の冷たい言葉に、咲真は言葉を詰まらせた。
どんな思いで今まで過ごされてきたのだろう。それを思うだけで、涙が出そうになる。
目の前の神様が深く傷ついているのを感じて、思わず大きな体を抱きしめた。
「神様は、愚かなんかじゃないです…!」
「お前に何がわかる」
「わ、わかります!」
狼神は、グルル…!と威嚇するように唸った。
とてつもない怒気を感じて勝手に体が震えだす。それでも咲真は続けた。
「だって、それでも加護を続けてくださるのは、史郎様との思い出を大事にしてるからじゃないですか…!愚かなのは、村人たちだ…」
自分なんかに理解されても不愉快だろう。
それでも、少しでもお心を慰めたくて咲真は抱きつく腕を緩めなかった。
「神様はお優しいです」
「優しいだと?お前を奴隷のように働かせたのをもう忘れたのか?」
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