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吾郎は下卑た笑いを浮かべて咲真に近づく。
「綺麗な着物を着せてもらって随分マシになったじゃないか」
「………」
咲真が何も言わずに黙っていると吾郎は綿帽子の上から咲真の頭を踏みつけた。
「うっぐ…!」
「男が嫁だなんて笑わせる。お前はやっと俺の家の小間使いから解放されると思って喜んでるのかもしれないけどな」
村長の息子で神田家次期当主である吾郎は、神田の人間の中で誰よりも咲真に辛く当たった。度を超えた折檻に周りのものが止めに入ることもあった。
これで最後だ…と言い聞かせ咲真が額を床に擦り付けてされるがままにしていると、吾郎は高笑いをした。
「俺から解放されると思って喜んだところで無駄だぞ。お前みたいなやつは、どこへ行っても嫌われ者の奴隷だよ。神様だってがっかりするさ」
「なんでそんな…」
「お前が選ばれたのは、この村で一番必要のない人間だからだ」
「俺はっ…ちゃんと役に立って見せる!」
睨むように吾郎を見上げた咲真を、吾郎はより一層力を込めて踏みつけた。
「お前っ…なんだその口の利きかたは!!」
続けて背中を幾度となく蹴りつける。
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