君が見ているのは

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※※※ 「みんな何頼むー?」  美佳が手を伸ばしてきたので、ランチメニューとグランドメニューを手渡す。  平日の昼下がり。私達は約束通り、サイゼリヤに来ている。  私が窓際、右隣に美佳、私の真向いに遠藤くん、その隣に宇田くんが並んで座っている。 「意外と混んでるね」  遠藤くんが周りを見渡しながら言う。 「そうだね。他の学校もテスト期間なんじゃない?」  そう言いながら、遠藤くんにもメニューを差し出した。  わざわざ渡した訳じゃなくて、あくまでもついでに、という感じを装って。我ながら面倒くさいと思う。 「ありがとう」  笑顔で受け取ってくれる遠藤くんを直視できない。  遠藤くんはメニューを開いて、宇田くんの方向に傾けた。 「孝太(こうた)はどうすんの?」 「俺、もう決まってるから。どーぞ」  宇田くんが言うと、美佳が声を上げた。 「え? 早くない? あたしまだ迷ってるよ」 「なにで迷ってるの?」  私は美佳の手元を覗き込む。美佳はランチメニューを指しながら答えた。 「うーんとね、このビーフキーマカレーか、オニオンソースのハンバーグかな」 「ピザじゃないの!?」  思わず大きな声が出てしまう。目の前で遠藤くんが吹き出した。 「ピザも食べたいけどさー。ランチメニューの方がやっぱ安いじゃん? ピザ1枚じゃお腹いっぱいになんないし」 「じゃあさ、みんなでシェアすればいいんじゃね?」  宇田くんが身を乗り出して、美佳の目の前にあるグランドメニューを開いた。ピザのページだ。 「加藤、どれがいいの?」 「マルゲリータとコーン!」 「結構食べるなあ」  遠藤くんが笑いながら言うと、美佳は口を尖らせる。 「あたし一人で食べるわけじゃないしー」 「りょーかい。ちなみに、カレーとハンバーグどっちをメインに食いたい? もう一つの方、俺頼むわ。一口やる」 「え? 孝太決まってたんじゃなかった?」 「ん、いいんだよ、それは。次来たとき頼むから」  遠藤くんの疑問に答えた宇田くんの耳は、少し赤い気がした。 「えー。料理見てから考える。とりあえずどっちも頼んで」 「ずる」  と宇田くん。 「ずるくない。だってどうせどっちも食べるし」 「やっぱりいっぱい食べるんじゃん」  遠藤くんが笑っている。あ、目が合った。 「菊池はなに食べるか決めた?」 「う、うん」  私は、熱くなった顔を隠すために俯いて、美佳が持つランチメニューに視線をやった。 「半熟卵のミラノ風ドリアのランチセットにする」
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