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「何かいいことでもあった?」
美佳が私を見る。
「え、なんで?」
声が裏返らないように、気をつけて答える。
「だって、半熟卵つけるときはいつも、なにか理由があるじゃん」
「そうなの?」
宇田くんが私と美佳を交互に見る。
「この前は、英単語テストで満点だったとき。その前は、クラスマッチで優勝したとき」
美佳が指を折りながら話す。
違うよ、美佳。
この前は、英単語テストに遠藤くんが花丸を描いてくれたとき。その前は、優勝が決まった瞬間、遠藤くんが私にハイタッチを求めてくれたとき、だよ。
……そんなこと、絶対に言えないけれど。
「俺、分かったぞ!」
宇田くんの指が私に向けられる。心臓が跳ねる。
「今日のテスト、自信あるんだろ。どれだ? 世界史? 数A? 現国か?」
言い当てられなかったことに少しほっとして、私は身体の緊張を解いた。
「違うよ。理由なんてないよ。ただ、単品よりランチメニューの方が安いなと思っただけ。みんなドリンクバーも頼むんでしょ?」
私が言うと、宇田くんが親指を立てて答えてくれる。
「もちろん!」
遠藤くんを盗み見る。彼は真剣にメニューを見つめていた。
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