1話、出会い-はじまり-

1/7
前へ
/9ページ
次へ

1話、出会い-はじまり-

多くの本棚が並んだ室内。 カーテンが開けられた窓からは、けして優しいとは言えない程の夕陽が差し込む。 外から微かに聞こえる賑やかな声とは反して、静かな室内に居るのはたった一人。 あちこちにある長机と椅子ではなく、窓側に一つはぶれたのか、はたまたそこに自身が配置したのか置かれた椅子に腰を下ろしている。 手元にある古びた本、というよりもまとめられた紙の束に近いそれに目を通して僅かに口角を上げる。 手元に目線を落としていた為、俯きがちで長い前髪に邪魔をされてその瞳は見る事ができず、僅かに見える鼻と口、そしてその側にあるほくろだけが伺える。 「ほんと、人間って馬鹿だな」 発された声は、楽しそうで、面倒そうで、そして興味がなさそうな矛盾したような色を含む声だった。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加