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流日 音(ながれび おと)は子供の頃から、人より少しミーハーな男の子だった。
恋だとかそういうものではなく、ただ周りが騒いだりする人に対して同じように騒いだり、かっこいいものを見てああなりたい!ではなく、かっこいいから!という理由で追っかけていたい、そんな人間だ。
それは末っ子として生まれ可愛がられたが故の、自由さと爛漫さからだったからかもしれないし、ただの持って生まれた性質なのか、本人は考えた事もない。
だからこそ、男子しかいない学園で人気の人間にできる親衛隊なんて、学園外から見たら訳の分からないものに入る事にも躊躇いも無ければ疑問も抱かず馴染めた。
ただしばしば、恋ではない自分と、恋する周りの温度差には戸惑う事があった。
「あーやっぱり会長かっこいいー」
「見られるとかラッキー!」
「うんうん!かっこいいよね!」
同じ親衛隊員の友人達と窓から外を覗く。
窓から見えるのは、サッカーコートでサッカーに勤しむこの学園の会長。
芸能人ばりのイケメンで一番偉い筈なのに、誰にも気さくで人気者。
別にサッカー部でも無いのに、放課後にサッカーをして居るのは友人に誘われたのか、飛び入りしたのか。
自分達の親衛対象であるが、そんな会長の性格上見守り隊に近い。
「あ、副会長だ」
「ほんとだ、会長また仕事ほっぽり出してきたのかなー」
校舎から出てきた副会長の姿を見た途端、走って逃げ出した会長。それを追う副会長。
楽しいこと好きでわりと気ままな会長に、真面目な副会長のこの学園ではよくある光景だ。
「あーあ、最悪!折角幸せだったのに、見せつけられた感じ!」
「副会長の事だからわざとっぽいしね」
「あー……」
大きな声ではしゃいでた先程までとは違い、途端に声を潜める。
二人の表情は如何にも不機嫌そのままで、流日は苦笑いするしかなかった。
この学園では男が男をーなんて今更で、二人は恋愛対象として会長が好きなのである。
だから会長と並んでも見劣らない有能な副会長にあまりいい感情は持てないらしい。
つまりただの嫉妬だ。
流日は恋愛対象としてではなく、ただ一番かっこいいと思った会長の親衛隊に入っただけだ。
だから会長以外の生徒会は勿論、風紀委員やその他人気者達もかっこよかったり綺麗だったり可愛かったりするので、その度に騒ぎたくなる。
だから今見た副会長にだって、あー綺麗ー!って言いたい。
でも言える筈もなく。
流日が、恋愛感情ではなく憧れで入った!というのは言っているので、皆承知だがだからと言って気持ちのままに周りを手放しで褒める事は難しかった。
その度に、下っ端とは言え何も考えず親衛隊に入った事に少し後悔するのだ。
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