夏の思い出の片隅に

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「ぼくね、わた雲のアイスが食べたくてきたんだ。わた雲アイス、ありますか?」  ぼくが聞くとお姉さんはにっこり笑った。 「もちろん。じゃあわた雲アイスを作りましょう」  そう言うとお姉さんはキッチンの隣の窓を開けた。外にはたくさんのわた雲が浮かんでいる。  お姉さんは、何かお歌のようなものを歌いながら、空に手を伸ばし、手を振った。すると、空にあった雲がその手に巻かれて、キッチンに置いてあったお皿に、ふわっと乗っかっちゃった! ぼくがびっくりしているうちに、お姉さんはくるくる手を振って、渦巻きアイスにして、ぼくの目の前に出してくれた。 「はい。わた雲アイスよ。どうぞ」 「すごい! 本当に雲がアイスになっちゃった!」  ぼくはわくわくした気持ちでスプーンを手に取った。いただきます! 一口食べると、甘くて冷たくて……。 「おいしい!!」  ほっぺたがとろけちゃうくらいおいしかった。お姉さんは嬉しそうに笑ってありがとう、と言ってくれた。ぼくはお姉さんをじっと見つめた。……このお姉さんは森の魔女さんなんだ。悪い魔女さんじゃなくて、とってもおいしいお菓子を作ってくれる、いい魔女さんなんだ。ぼくはこの森の魔女さんが大好きになった。
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