夏の思い出の片隅に

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 ……あれから何年経つだろう。里帰りに戻ってきた時、ふとあの、お菓子屋さんの魔女のことを思い出したのだ。彼女は元気だろうか? 気になって今、僕は再びこの森へ舞い戻ってきた。あの時と大きく変わってはいないが、不思議と森の木々の数が減っているように感じた。  あの時僕を導いてくれた看板は跡形もなく、なくなっていた。必死に古い記憶を手繰り寄せて、入り組んだ道をひたすらに歩いた。想像以上に入り組んでいて、看板があったとはいえ、子どもの僕がこんな道を良く歩けたものだと感心した。……それとも、僕の体力が落ちただけなのだろうか? 「あ、あった!」  かなりの時間を歩いたが、ようやくあのレンガ造りの家が姿を現した。あれから時間がたっているせいか、レンガの色は剥げ、所々に雑草も生えていたが、入り口にはちゃんと「かいてんちゅう」のプレートが下がっている。僕は勢いよくドアを開けた。  ドアベルが鳴り、一斉に皆が振り向く。店内には3、4人程の子どもと彼女がいた。皆驚いた顔でこちらを見ている。 「い、いらっしゃい……」 「こんにちは。……魔女さん、僕のこと覚えてる?」
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