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「え、えぇ。覚えているわ。……わた雲のアイスクリームが好きだった子、よね?」
僕は大きく頷いた。彼女が僕を覚えていてくれたことが嬉しかった。その顔はあの時と全く変わらず、若々しい。周りの子どもたちは、どこか余所余所しい目で僕を見ている。……昔と比べて、今は子どもたちが随分と少ない気がする。
「このお兄さんは昔このお店の常連さんだったの。まだ皆くらいの頃にね」
そんな子どもたちを見かねてか、彼女は慌ててそういうと、こちらの方へと歩み寄ってくる。
「看板もなかったでしょうに、よくここまで来たわね……この店に大人が来るのはいつ以来かしら」
彼女は心底驚いた顔で、僕を見つめた。
「どうしても、あのアイスをもう1度食べたくなって」
ちょっと気まずさを感じて、僕は頭を掻きながら弁明した。彼女は微笑んだままだが、その笑みはどこか曇っているように感じられた。
「作ってもらえないかな?」
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