不思議なレストラン

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 ナビが壊れる、なんてことがあるんだな。  その男は、車を路肩に停め、力なく扉を閉めた。もう新規の取引先へは間に合わない。せめて連絡をしたいが、あろうことか圏外ときている。鬱蒼と茂る木々を、男はただ呆然と見つめるしかなかった。 「お腹、空いた」  無駄に美味しい空気を吸って、車に乗り込む。役に立たないナビは切ってしまった。こんな田舎では食事する店もないだろう。腹を鳴らしながら、くねくね道にただアクセルを踏んだ。 『次、右です』  突然の音声にハンドルを誤りそうになる。切ったはずのナビが起動していた。画面には、くねくね道のT字路が映っている。右のくねくね道の先にフォークとナイフのマークがぽつり、とある。 「なんなんだろう、このナビ。こんな山の中にあるわけないだろ」  そう独り言を吐き出すも、腹がぐぅと鳴った。 「もう、ここまできたらヤケだ。行ってやろう。ナビと心中だ」  男は右に折れ、アクセルを踏み込んだ。
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