30人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
男は車を降りて目を擦った。とても現実には思えない。
『目的地、周辺です』
さわさわと揺れる木々の中に、サイゼリヤがあった。
「……うそ」
少し腰が引ける。どうやら、とんでもない世界に迷い込んだのではないだろうか。だが、腹は腹で裏腹に、ぐぅぐぅと鳴り続けた。
男は鳴り続ける腹を見つめて、そっとドアを開いた。
「いらっしゃいませー」
元気な女の子が颯爽と出迎えてくれた。名札にリリコンと書いてある。……あだ名……。ポップなサイゼリヤだこと。
ピンポーン!
びくり、と後ずさりする。
その店員はなぜか呼び出しボタンを持っている。不思議そうに見つめると、その視線に気づいたようだ。
「あ、ああ、これ? マイブームなんです」
そ、そうですか、との言葉も出せず、店内を見渡す。
こんな山の中なのに、店内は混んでいた。かなりテーブルが埋まっている。
「では、0番テーブルへどうぞー」
その店員はスキップしながらバックヤードへ行ってしまった。
いや、どうぞーって……。0番テーブル……。自分で探すのか。
その不思議な0番テーブルを男は探し始めた。
最初のコメントを投稿しよう!