不思議なレストラン

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 男は車を降りて目を擦った。とても現実には思えない。 『目的地、周辺です』  さわさわと揺れる木々の中に、サイゼリヤがあった。 「……うそ」  少し腰が引ける。どうやら、とんでもない世界に迷い込んだのではないだろうか。だが、腹は腹で裏腹に、ぐぅぐぅと鳴り続けた。  男は鳴り続ける腹を見つめて、そっとドアを開いた。 「いらっしゃいませー」  元気な女の子が颯爽と出迎えてくれた。名札にリリコンと書いてある。……あだ名……。ポップなサイゼリヤだこと。  ピンポーン!  びくり、と後ずさりする。  その店員はなぜか呼び出しボタンを持っている。不思議そうに見つめると、その視線に気づいたようだ。 「あ、ああ、これ? マイブームなんです」  そ、そうですか、との言葉も出せず、店内を見渡す。  こんな山の中なのに、店内は混んでいた。かなりテーブルが埋まっている。 「では、0番テーブルへどうぞー」  その店員はスキップしながらバックヤードへ行ってしまった。  いや、どうぞーって……。0番テーブル……。自分で探すのか。  その不思議な0番テーブルを男は探し始めた。
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