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それからルミナは小屋の中に閉じ込められた。
逃げられないように見張りもつけられてしまったので彼にはもうどうにもできない。
アレンは今頃どうしているのだろう。家に戻ってこないルミナを心配して、捜してくれているだろうか。
そういえばいつも彼の食事を用意してやっていたが、ちゃんとなにか食べているのか。
ルミナは高い位置にある窓を見上げた。
今日は月の明るい日だから、ルナリアも洞窟で大人しくしているはずだ。
満月の夜になったら、ルミナは生贄としてルナリアに捧げられる。
こんなことならアレンに言われた通りとっとと村から逃げ出すべきだった。
彼を思うと寂しさでやりきれない。
生贄にされること以上に、孤独感の方が強かった。
それから数日後の満月の夜に、ルミナは生贄として洞窟へ連れて行かれた。
洞窟の奥には泉があり、ぽっかりと開いた天井からは月の光が降り注いでくる。
白い服に着替えさせられ、両腕を背中側で拘束されてルミナは泉の前に放置された。
ルミナはぼんやりとした目で月の光を反射する泉を眺める。この水の中にルナリアがいるようだが、ずっと慕っていた彼女に殺されるのだと思うとなんだか不思議な気持ちになってしまう。
「?」
気のせいか、どこからか騒がしい物音が聞こえてくる。
今この空間にいるのはルミナ一人だけだが、一つ前の部屋には見張りが立っていたらしい。
なにが起こっているのだろうと疑問に思っていたら、ほどなくして一人の青年が現れた。
「おいお前、迎えに来たぞ!」
慌ててやって来たのは汗だくになって肩で息を吐いているアレンだった。
ルミナは驚きで目を瞬かせる。
「お前今までどこにいたの?」
「お前を捜してたんだって! 家に帰ってこないし、村の連中に聞いても知らないっていうし。てっきり俺に嫌気がさして実家に帰ったのかと思った」
「あそこが俺の実家なんだからそれはない」
「おう。だから村中の家一軒ずつ周って調べてた」
その地道な努力の結果、彼はルミナが生贄にされると知って助けに来てくれたらしい。
アレンが縄をほどいてくれてルミナは目頭が熱くなる。
「けどなんでお前が生贄に選ばれたんだよ。まさかあいつらにはお前がおっぱい小さな女子にでも見えていたのか?」
「ちげーよ馬鹿。まあいいや、さっさと行くか」
けれどルミナは、なんとなく泉の方へ視線をやってそのまま立ち尽くしてしまう。
「どうした?」
「ルナリアさま、どうしよう」
「どうにもできないだろ。あいつらボコして聞いたんだよ、彼女がああなっちまった原因をさ」
アレンによると、長老たちは女神に毒を盛るようにと魔物たちに指示をされていたらしい。
普通ならこんなことを聞く道理なんてない。
けれど魔物たちはまんまと村人の心の不安に入り込んで来た。女神の力は弱っているから、このままでは遅かれ早かれ村は魔物の手に落ちてしまう。
けれど魔物は自分たちと契約すれば村に手出ししないでいてくれると言った。
やることは一つ、ただ女神への貢物に毒を混ぜておくだけ。
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