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その頃、神殿の大広間ではルミナとリリアの犠牲によって悪魔が再び封印されたという話が司祭の口から伝えられていた。
「リリアとリリカには可哀相なこととなってしまったが、あの姉妹も女神さまと共にみなを見守ってくれるだろう」
司祭の話に、集まっていた街の者や巫女たちは涙を流した。
悪魔の元へ赴いた際、英雄の子孫ロゼスは女神ルミナの力を借りて果敢に戦った。けれど悪魔が反撃をしようとしたとき、そこへリリアが現れてルミナたちを庇って倒れた。
無事に悪魔の封印に成功したものの、リリアは助からず、役目を終えたルミナはリリカの肉体ごと天に帰ってしまった。
「彼女たちのことを決して忘れてはならない。我々を救ってくださったのは、他の誰でもないルミナさまとリリアなのだから」
「うーん、確かに間違っていないわね!」
「根本の部分が色々と間違っているはずなんだけどな」
少女たちの可憐な声に司祭はぎょっと目を剥いた。
いつの間にか壇上に現れたリリアたちに他の者たちもざわざわし出す。
「そんな、なぜ生きている?」
「なぜって、神様のお導きじゃないかな?」
冗談めかしてルミナが言ってのける一方、リリアはつかつかと司祭の前へ歩いて行く。
「司祭さま、見損ないました! あなたがあんなことするなんて!」
「わ、私はただ、街の為に」
「そう。確かにその気持ちもあったのだと信じています。ともかく、私はルミナさまとともに悪魔を退治してまいりました!」
リリアが声を張り上げると混乱のざわめきはさらに激しくなった。
「どういうことだね?」
「悪魔の正体を突き止めたのです」
「悪魔の、正体だと?」
「まー真の悪魔はいたいけな女子二人を生贄にしようと考える外道だと思うけど」
ルミナはいつものような砕けた口調で、ただし他の者たちには聞こえないくらいの大きさで言った。
「みなさん落ち着いて聞いてください。ルミナさまの力により、悪魔の呪いは取り払われました」
リリアが言い終るのと同時に、その場にあたたかな風が舞い込んできた。
彼女たちの後ろに、光をまとった美しい女性が現れる。
大蛇のような、けれど美しい下半身を持った、人よりも大きな姿。
長い髪に透き通るような肌、そして優しい顔をした女性に司祭を含めその場にいた人々は立ち尽くす。
「この方はルナリアさま。私たちの暮らすこの土地を守ってくださっている、本当の女神さまです!」
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