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「ルミナ、私やっぱり寂しいよ」
「そう思ってもらえたのなら光栄だ」
リリアは胸の前できゅっと拳を握り締める。
ルミナの方もリリアと同じように、どこか切なげな様子だった。
「あのねルミナ、私は今まで愚直に女神さまを信じて来た。だからその正体があなただと知ったとき、最初はすごくがっかりしたの。でも今は、女神さまの正体があなたでよかったって思っているよ」
「本気?」
「おかげでこうして会えたんだもの。もっと色々お話して、ちゃんと友達になれたらよかったんだけど」
リリアはじっと彼を見つめた。
「これからもあなたを崇め続けていい?」
「それまじで言ってんの?」
「本気だよ。まあ、崇めるって言い方は語弊があるかな。あなたに頼るってわけじゃなくて、飽くまでも心の支えにしたいだけ」
「まあ、あの世から応援くらいならしてやってもいいよ」
「やった」
リリアはにこにこした。つられたようにルミナも笑みを深める。
「俺もお前に会えてよかった。女子は好きじゃないんだけど、お前はさほど嫌いじゃないし」
ふと、彼を包んでいた光が強くなるのに気づいた。もう時間なのだ。
「やっと眠りにつける。今なら、あいつに会えるかもな」
「天国でアレンさまと仲良くしてね」
「お前も長生きしろよ」
そう言ってルミナは最後に笑みを向けてくれた。
彼を包んでいた光はいっそう強くなり、その光が消えるのと共に彼の姿は完全に見えなくなる。
「ばいばい、ルミナ」
とうとう彼は本来あるべき場所へと行ってしまったのだ。
やはり胸がちりちりするけれど、これが正しかったのだと自分に言い聞かせる。
「う、うぅん」
小さな声がして振り返ると、リリカがゆっくりと体を起き上がらせるところだった。
「姉さん、気がついたのね」
「ここは? 儀式は、どうなったの?」
困惑している姉の体を、リリアはぎゅっと抱きしめた。
「成功したよ。色々とあったから、説明が大変だけど。街は救われたんだよ」
それからリリカにこれまで起こったことを話した。
姉に憑依した人物が、かつては生贄となって死んだ村人だったこと。
洞窟に封印されていた悪魔の正体が、本当はこの地を守ってくれていた女神さまだったこと。
悪魔は元の姿に戻り、女神ルナリアは再び人々を守護してくれることとなった。
そしてあるべき場所へと旅立っていった青年は、これからもきっとリリアを見守っていてくれることだろう。
だけどルミナが本当はどんな人だったのかは、リリアだけのひそかな思い出として胸にしまわれることとなった。
終わり。
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