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ところでよく知られた話だが、法隆寺五重塔の心柱は、耐震の役目も果たしている。心柱が塔と異なった揺れ方をするため、 地震の揺れを抑制してくれるのである。長い年月、幾度もの大地震に耐えてこれたのは、この構造のお陰なのだ。
五重塔全体が木組みでできており、木組の隙間や木材のくい込みなどである程度の歪みを持たせているからこそ、しなやかな動きで、衝撃に耐え得たのである。
だがいま、弟子の拓也が任されている心柱は、その構造を考慮して出した計算よりも大きくぐらついていた。
棟梁たちは1週間前から、ぐらつきを埋める補修材を削ったり継ぎ足したりしているのだが、うまくいかないでいた。
「納期が遅れてるよってにな、きばって頼むわ」
「はい」
「頭休めたらええ考えが浮かぶかもしれん。休憩にしよか。おおーい、昼メシやぞお」
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