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珠子はそれをポケットに入れると再び穴に下り、四角い箱の下に置いた。そして、金属板を元通りに被せた。
スキップしながら、家路を急いだ。
棟梁たちが昼休憩から戻った。
拓也は調整をするべく、再び心柱を礎石の穴に嵌めた。すると、先ほどと打って変わって、ぐらつきが止んだ。計算通りの揺れに収まってくれたのである。
「棟梁、見てくんなはれ。なんでかわからしまへんけど、うまいこといってまっせ」
「おお、ほんまやな。湿気がアレやったんかいな」
「棟梁、よかったでんな」
「よかった、よかった。これで、令和の大修理も、無事に終えられそうや」
その日の作業が終わった夕方、棟梁は、五重塔の床に這いつくばって、あるものを探していた。
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