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ここは法隆寺・五重塔内部。「令和の大修理」を行っている最中である。
東山賢一棟梁はじめ、20人から成る弟子、そして、9歳になる孫の賢太が慌ただしく立ち働いていた。
そこへ、棟梁の5歳になる孫娘の珠子が入ってきた。
「おじいちゃん。早くゲームの続きしようよー」
「おう、おう、珠子や。お前はここへ来たらあかん。はよう家に帰り。ここは、刃物がようけあるさかいに、危ないよってにな。賢太はようしごいたらなあかんけどな」
と言って棟梁は、珠子の兄の賢太を見やった。賢太は槍鉋を不器用に動かして、ヒノキを鰹節より薄う削る練習をしていた。賢太は小学校へ行っている以外の時間はこうして棟梁に、大工の技の習得をさせられていた。
今日は、賢太の小学校は創立記念日で休みだ。ゆえに棟梁は、本当は友達とサッカーがしたい賢太を、作業現場まで連れてきたのであった。
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