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朝の体育館は静かでいつもはひしめき合って練習しているバトミントンや体操部が居なければこんなにも広く感じるのかと改めて思った。
端っこに折りたたんである卓球台を引っ張り出して、ピンポン球が遠くに行かないように周りにフェンスを張りながら、
「こんなもんか」
「さぁ、やろうよ」
君は元気がいい。
ショートの髪の前髪をいつものようにピンで止めて、ケースから取り出したラケットを二、三度振りながら台に向かう途中こっちを振り返り
「早くぅ」
笑いながら催促する。
ほぼ徹夜明けのぼくは、足首の柔軟もそこそこに君の後を追う。
「フォアからね」
最初はゆっくりとピンポン玉は、ポン、ポン、ポンとリズムを刻み、そのうちどちらからともなくラリーのスピードを上げていき、ネットを挟んで行き交うその小さな白球を鋭い視線で追いかけてラケットを振り続ける。
「少しランダム入れようか?」
声をかけ、バック側へピンポン球を送ると君は表ソフトのラバーでショートして返してくる。
その変化にぼくの方がミスしてネットにかけてしまった。
「ごめん!」
と軽く謝りながら、ちょっとしたプレーにさえ君との実力差を感じながらまたピンポン球を送り出す。
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