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『幸せなん?』 昔に聞いたことのある声が聞こえた。
『尚ちゃん?』 声にならない。
真っ暗な闇の中で手足をもがく。
何かに手が引っかかったような気がしたところで目が覚めた。
慌てて布団に潜り込み目を閉じた。もう一度その声が聞きたくて・・・
叶わず暫くして布団から顔を出すといつもの白い天井クロスがぼんやりと視界へ広がった。
一日遠くなった今日がまた始まる。
そろそろとベッドを抜け出し、リモコンのボタンを押す。
テレビの向こうでは、東京オリンピックの最後の代表が決まったとニュースが流れている。
『ピンポンもメジャーになったもんだ』 内心で驚き、朝のコーヒーを啜りながら自分たちの学生の頃との違いに思いを馳せた。
スポーツには喜びと挫折がある。自分のために、あるいは誰かのために、手に入れたいもののために、到達したいその場所を目指す。
あの時のぼくは何に向かっていたのだろう・・・
あの三年余りのあの時間に後悔を残して・・・今日も玄関を飛び出し仕事に向かう。
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