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⁂未来
校舎から眺める校庭には炎天下のなかで走り回るサッカー部の後輩たちが大きな声を掛け合いながら汗を流す。彼らを眺めていると体育館の屋根裏部屋のような狭いスペースで練習している後輩たちのことが少しだけ頭を過っていく。県総体を終わったぼくには本格的な受験に向かってお盆期間の少しを除いての補習授業が待ち構えていて、未来に漠然とした不安を抱えながら黒板に向かっていた。
「進路どうするの?」
と友達が聞けば
「この成績じゃなぁ。行けるところあるのかなぁ?」
なんて心の焦りを隠しながら呑気に答える。
だけど、県総体で思い通りの結果を残せなかったぼくにはどうしてももう一度挑戦する場所が欲しかった。ピンポンは唯一続けてきたものであってやり尽くした感のないものでもあったことが静かにぼくを動かして行くのが分かった。
「靖くんは凄いよね。水泳の成績いいし、勉強もできるもんね。いつやってるの? 教えてほしいゎ」
医学部を目指す靖くんは本当に凄いやつで、ぼくの知らない英単語や数式をすらすらと教えてくれる。
「頭の構造が違うんよね」
「焦ることないんじゃない?最後に笑った者勝ちよ」
といつも慰めてくれた。
この夏からの半年間、ぼくは靖くんの背中を追いかけて必死で勉強した記憶がある。ピンポンからは一歩も二歩もそれ以上に離れて、ただただ受験勉強を日々続けた。手に入れることができるのかどうかもわからない未来に向かって。
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