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⁂朝(プロローグ)
冷たく透きとおった湖のなかをゆっくりと沈んでいく。
小春日和の北風にさらわれた最後の木の葉がのっぺりした地面に落ちていくようにゆっくりと。ときおり水疱を発しながら水面から離れてゆく。
君と生きたあの短い瞬間も同じようにこの手を離れ、鮮明な記憶というより自分に都合のいいような物語に変形しながら脳裏に刷り込まれようとしているのかもしれない。
それが自棄にやるせなく感じること、その場所から逃げ出したくなるのだけれど、どうしていいのかわからずにただこの身を時間に預けるしかない焦燥感に溢れていた。
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