イヤリング

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「わっ」  突然前後に揺さぶられ、持っていたつり革ごと後ろに引っ張られる。ぐらっとしつつも一歩下がって踏ん張った巳奈の視界の端にバランスを崩し倒れそうになる紗希が映り、咄嗟に腕を伸ばした。  床に打ちつけられる衝撃を予期していたのだろう、ぎゅっと目を瞑っていた紗希が、巳奈の腕の中で目を瞬かせた。睫毛がぱちぱちと瞬く度に震える。視線はやがて巳奈の顔へと定まった。 「あ……」  抱きしめるような格好になったまま、見つめ合う。  まっすぐに自分を見上げる紗希は、何かを祈っているような、己奈に懇願するような。……あと少しで泣き出してしまいそうな目をしていると、巳奈は気づいた。  二人の上に、急停車を詫び駅に着いたことを告げるアナウンスが流れる。巳奈は自分のそれよりも僅かに小さい紗希の手を掴み、電車を降りた。
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