イヤリング

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 降りた駅は、ホームが一つしかないくらいこじんまりしていて、乗客も殆どいなかった。巳奈も紗希も通り過ぎたことはあったが降りるのは初めてだった。集合場所になっている駅はまだかなり先だ。  巳奈は無言で紗希の手を握ったままぐいぐいと大股で進む。その背中を驚きと戸惑いと、僅かな期待がない混ぜになったような表情で見つめながら、紗希は早足でついていった。  改札を抜けて、この駅唯一の出口から外に出る。見知らぬ町を、巳奈はぐんぐん歩いていく。 「……みな、ちゃん」  紗希が息を弾ませながら呼びかける。巳奈の耳には入らなかった。とにかくどこか遠くへ行こう、という焦り、ともすれば使命感と言えなくもないような衝動に身を任せていた。 「巳奈ちゃん」  もう一度自分を呼んだ紗希の声も無視して進み続ける。  ただひたすら、まっすぐに。 「……どこまで行くの」  どこだって良かった。行き先なんて巳奈にも分からない。ただ、紗希と二人でどこかに行かなくてはならない。それだけだった。  駅前の商店街を通り過ぎ、住宅がぽつぽつとあるだけの、細い道に入った。少しして、突然紗希に手をぐっと引かれる。振り向くと、沙希は前を指差した。 「あの公園で話さない?」  次の信号を渡った先、通りの反対側に小さな公園があった。初めて自分の後ろを見て、ずいぶん遠くまで来ていたと気づいた巳奈は、 「……わかった」  小さく頷いて、また歩き始めた。
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