ふつうのケーキ

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ふつうのケーキ

 これは友人の話です。  この日菜摘(仮名)は、甘いものが食べたくなり、妹と弟を連れて地元でも特に美味と評判のケーキ屋さんへ行きました。  とは言え道が混んでたから時間が押してる! 滞在時間5分以内にしないとやばいぞ!と思い、慌ててケーキを選びました。 「あと5分!あと5分だから急いで選ぶよ!」  あと5分後はちょうど夕方5時。  5時半には菜摘がいつもチェックしている大好きなジョニーズのイツキくんが出る番組が始まる。  …あ、だから時間が無くて「あと5分」なのか…  取り敢えず。  お父さんにはチーズケーキ、お母さんにはショートケーキを買うことにし、  菜摘はモンブランで妹はミルフィーユ、弟はチョコレートケーキに決め、注文をしました。  ケーキを取り分けてもらい、レジへ行きました。  ふとその時。  レジ横の小さな手書きのメニュー表が菜摘の目に入りました。  手書きのメニュー表のそれは厚紙で作られ、簡易的に立てられている「これ数分で作っただろ」的なもので、5つのケーキの名前しか書かれていませんでした。  たぶんこのお店の看板メニューのようなケーキが書かれているのでしょう。  そこには、「ふつうのケーキ」という文字がありました。  ふつうのケーキだと!?  ふつうのケーキってなんだ???  ほかのケーキはふつうじゃないのか???  ふつうのケーキって、ショートケーキか何かか???  もうケーキ決めちゃったけど、あと1つくらい増やしても良い、よね???  と思い菜摘は、 「追加注文1つできますか?」  と尋ねてみたら、レジ操作をしていたパティシエのお姉さんがニコリと微笑み、 「良いですよ」  と快く引き受けてくれました。  あと5分…を既に切っているから、早く頼まないと、という気持ちもあり、 「あの、普通のケーキ下さい」  と少々早口で、そして意気揚々と頼みましたが、 「はい?」  お姉さんは首を傾げました。 「だから、普通のケーキ下さい」 「…?普通の、ケーキ、ですか?」 「はい。ここに書いてある…」  と菜摘はレジ横の小さな手書きのメニュー表を指差しました。 「…あの、お客様、こちら、普通のケーキではなく、フルーツケーキなんですが…」 「えっ…!??」  …よく見るとそれは、「ふつうのケーキ」ではなく、「フルーツケーキ」。 「フルーツケーキ」を「フツーノケーキ」と読み間違えた故のミスだぁぁぁーーー!!!  パティシエさんは必死に笑いを堪えて対応、菜摘は顔を真っ赤にしながら、弟と妹は笑いを堪えながらお店をあとにしました。  あと5分と急かされた状況下で、たった5分の滞在時間の中で発生した日常の出来事でした。  おしまい。
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