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「女はコロナ禍にあっても新しいライフスタイルに希望を見出そうとしてこの世を肯定し、前向きに生きようとする。与えられた境遇を何でも正しいと思って受け入れるんだ。しかし、俺はこんな世の中に於いてあと5分も生きてられないと思うくらい絶望的な気分になる」と夫はホテルのレストランでサーロインステーキにがっつく妻に真情を漏らした。
「何でこんな快適でリッチな気分の時にそんなことを言うの?私に耳にタコができるくらい短足って言われるから?」
「そうじゃない。お前に短足と言われることには俺はお前におべっかを言うことと同じくらい慣れてるからな」
「じゃあ、何で絶望するの?」
「この都会の夜景を見ろ」
「素敵じゃない」
「そう思うのは浅はかというもんだ。あの摩天楼群の光を放つ部屋部屋ではこの中と同様に照明以外にも空調や送風や換気の為にどれだけ電力を消費し、どれだけ二酸化炭素を排出し、どれだけフロンを排出し、どれだけ光化学オキシダントを排出し、どれだけ粒子状物質を排出しているか分かるか?そしてヒートアイランド現象が起きてどれだけ熱中症患者を生み出し、どれだけ感染症を媒介する生物の越冬を可能にし、どれだけ大気汚染を悪化させ、どれだけ熱中症以外の病人を生み出し、どれだけ積乱雲を発達させ、どれだけ集中豪雨や雷雨を齎しているか分かるか?そして、また、お前のように大多数が牛肉を食すことでどれだけメタンガスを排出し地球温暖化を促進させているか分かるか?」
「・・・」
「ふふふ、流石にぐうの音も出なくなったな。さてと俺は牛肉じゃなくて短足だけに豚足を食うかな。ハッハッハ!」と夫はここぞとばかり飛沫を放散するほどの大笑いをすると、周りから白い目で見られ、顰蹙を買った。
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