6人が本棚に入れています
本棚に追加
「おばあちゃんと、お話したいー!!」
少し離れた場所から、子どもの泣き声が聞こえてくる。
「もう無理って、言ってるでしょう!?」
そして、それを叱る母親の声も。
「イヤだ!」
「ワガママ言わないの!」
親子のほうを見ると、お墓の前に子どもがしゃがみこんでいた。真夏の太陽に照らされた地面は、相当熱いだろうに。母親に腕を引かれても、子どもは身動きひとつしない。
「だって! 僕だけ、おばあちゃんと最期の挨拶できなかったもん!!」
嫌だ、嫌だと泣きじゃくる子どもの言葉と声が。わたしの胸をギリギリと締めつける。おばあちゃんと、最期の挨拶。
(わたし……ちゃんと、できたかな?)
わたしは最期の日に、祖母と会うことが出来た。だけど、意識の無い祖母にどんな言葉をかけていいのか分からず、何も言えなかった。
「エリ。靴のかかと、踏まないの! お墓の前でしょ。礼儀正しくしなさい」
母親の怒る声に、古い記憶が蘇る。
最初のコメントを投稿しよう!